SD-WAN と MPLS:類似点、相違点、利点の比較検討
- Cloud networking
- 2021年6月11日
2 つのネットワーク モデルに注目し、それぞれの利点を分析して、どちらか1 つに絞る必要がない理由を説明します。
近年、Software-Defined Wide Area Networking (SD-WAN) がネットワーキングの世界で急速に普及し、話題になっています。Forrester Analytics の「Global Business Technographics® Network and Telecom Survey 2020」によれば、調査に参加した意思決定者の 82% は、2021 年度の組織の最優先事項が SD-WAN であると回答しました。しかし、MPLS (Multiprotocol Label Switching) はどうでしょうか?SD-WAN の普及により、この強力なルーティング技術は不要になったのでしょうか?SD-WAN と MPLS にはどのような類似点と相違点があるでしょうか?両方を使用する正当な理由はあるでしょうか?この記事では、両方の技法を検討し、組織にとってどちらが最適であるかを決められるように、利点と類似点を浮き彫りにします。
SD-WAN と MPLS の基礎と仕組みについて検討することから始めましょう。
2021 年にビジネスに影響を与えるクラウド トレンドの詳細については、Megaport が委託した Forrester Consulting の『2021 クラウド接続バイヤー ガイド』をダウンロードしてください。
SD-WAN とは何か?
Software-Defined Wide Area Networking (SD-WAN) は、エンタープライズ WAN の多様性や制御性を高め、ローカル エリア ネットワーク (LAN) のような機能をより広い範囲で求める企業に対し、広域ネットワークを提供するソフトウェア定義型アプローチです。
SD-WAN は、従来型のネットワーク モデルを取り込み、ソフトウェア定義型仮想ネットワーク オーバーレイを上位に追加します。このオーバーレイは、コントローラーによって一元的に管理・プロビジョニングされるので、デバイスことのネットワーク構成と管理の手間が省けます。アンダーレイ (データ プレーン) は、デバイス間のパケットを処理および転送するタスクを担当します。
オーバーレイは、パブリック インターネット、4G、5G、MPLS などの幅広い標準ネットワーク トランスポート サービス上で実行できます。基盤となるネットワーク トランスポートのパフォーマンスに基づき、アプリケーション対応型ルーティングは、リアルタイムで機密性の高いアプリケーションのパフォーマンスを維持するために、アプリケーションが特定のサービスをいつどこで使用するかを制御します。
MPLS とは何か?
MPLS は Label Switched Path (LSP) ネットワーク モデルです。このモデルでは、データ パケットはレイヤー 2 イーサネットまたはレイヤー 3 仮想プライベート ネットワーク (VPN) のプロビジョニングから、事前定義されたプライベート経路を経由して宛先に直接到達します。LSP は、低レイテンシーのエンドツーエンド ルートでネットワークの過密部分を回避してトラフィックを誘導するために、静的に定義できます。
既に MPLS をご利用の方は、MPLS ネットワークを最新化し、ソフトウェア定義型にすべき 5 つの理由をお読みください。
MPLS サービスは、インターネットや、通信事業者のネットワーク上の他の MPLS サービスとは分離されており、パケット ロス、ジッター、レイテンシーの基準に関するサービス レベル合意書 (SLA) によって拘束される専用サービスとみなされます。
略語で頭が混乱していても、心配はいりません。最も難しい部分は終わりました。SD-WAN および MPLS とは何かについて理解したところで、それぞれの技術の利点を検討しましょう。
SD-WAN の利点
SD-WAN はより新しい、そして間違いなくより人気のある技術です。Cisco、Fortinet、VMware などネットワーク界の大手企業が、ますますリモート化や複雑化が進むエンタープライズ ネットワークを簡素化するために、SD-WAN ソリューションを提供しています。SD-WAN には、以下のようなさまざまな利点があります。
一元化された管理システム
ほとんどの SD-WAN ソリューションは、一元化された管理システムをデフォルトで提供し、自動化、セキュリティ、アプリケーションレベルの可視化などの機能を内蔵しています。SD-WAN デバイスを別のベンダーのネットワーク管理システムに統合する必要がないため、時間とコストを大幅に節約できます。
柔軟なプライベート オーバーレイ
SD-WAN は、パブリック インターネット、プライベート MPLS、両方の組み合わせのいずれであっても、任意の種類のネットワーク トランスポート上にプライベート オーバーレイを構築できます。この柔軟性の高いモデル内で異なる種類のネットワーク トランスポートをバンドル化することにより、全体のコストを下げながらセキュリティを高め、より高い帯域幅を実現できます。
ゼロ タッチ プロビジョニング (ZTP)
ゼロ タッチ プロビジョニング (ZTP) とは、ローカル構成なしでデバイスまたはネットワークをプロビジョニングする機能です。一部の SD-WAN デバイスは ZTP に対応しており、工場からサイトへ直接出荷できるので、構成を適用する必要はありません。インターネットに接続すると、ZTP デバイスは中央のコントローラーに接続し、デバイスのシリアル番号と照合する検証を受け、構成をダウンロードし、オーバーレイ ネットワークに参加します – 驚くほどシンプルです。
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MPLS の利点
MPLS は、この比較においては古い技術です。コストが高く、柔軟性が低い点が SD-WAN に比べて不利ではありますが、却下すべきではありません。MPLS には以下のような独自の利点があります。
一貫した接続
MPLS は、スループット、レイテンシー、ジッターに関する SLA レベルが備わった専用プライベート サービスとして使用できます。MPLS ネットワーク全体のエンドツーエンド接続は、ネットワーク事業者によってこの SLA の範囲内で実行されることが保証され、信頼性と一貫性が確保されます。
先を見越したネットワーク管理
MPLS ネットワーク容量は先を見越して管理され、エンドツーエンド レイテンシーはプロバイダーによって綿密に監視されます。これにより、パスは輻輳状態にならず、障害が発生したら直ちに対処されます。このネットワーク管理に対するきめ細かいアプローチによって、ダウンタイムをを最小限に抑え、企業の生産性を最大限に高めることができます。
容易な構築
静的で予測可能な要件を備えた WAN 設計は、MPLS を利用して簡単に構築できます。2 つの MPLS リンクから構成されるシンプルで冗長な MPLS 対応サイトは、実装もサポートも簡単です。
クラウドが混乱を引き起こしている場合は、MPLS ネットワークを仮想ルーティングで保護しましょう。方法については、当社のブログをお読みください。
SD-WAN と MPLS の類似点
SD-WAN と MPLS にはいくつかの重要な相違点がありますが、重要な類似点もあります。
SD-WAN と MPLS の類似点:
- 高パフォーマンスの信頼できるプライベート WAN を提供。
- Internet Protocol Security (IPSec) VPN を使用して、プライベート オーバーレイ (SD-WAN) を提供。ラベル付き MPLS。
- プライベート IPv4 (インターネット プロトコル バージョン 4) を使用して、プライベート オーバーレイ内で WAN に接続されたデバイス間の通信に対処。
- トラフィックを異なる優先順位や重要レベルに分類。
最終決定
SD-WAN と MPLS は、個別のネットワーク モデルとして扱われることが多いですが、上記の比較結果が示すように、直接競合する構成ではありません。どちらのモデルが最適であるか、最終的に一方に絞り込む必要はありません。
複数のエンドポイントとクラウド プロバイダー間の接続を効率化する必要があるなら、コスト効率が高い実証済みのソリューションは SD-WAN です。一貫性、信頼性、シンプルさを追究するなら、MPLS だけで事足ります。しかし、規模が大きい、またはさらに複雑なネットワーク要件があるなら、MPLS と SD-WAN を併用してハイブリッド WAN 設計を採用することができます。SD-WAN のアプリケーション対応ルーティングの利点により、Voice over Internet Protocol (VoIP) などの重要なトラフィックは信頼できる MPLS トランスポート経由で転送し、重要ではないトラフィックはインターネット トランスポート経由で転送することができます。クラウド接続は拡張し、これからも進化を続けるため、MPLS と SD-WAN を併用することで、組織の基礎を効率的に築くことができます。